研究課題
基盤研究(C)
電解発光法とリポソームを組み合わせた新規高感度分析法を確立し、さらに実試料として病原性ウイルスの検出に応用することを目的としている。本分析法の鍵となるリポソームは内部に電解発光種のルテニウム錯体あるいはナノ粒子を内封し、リポソーム表面に抗体を修飾したものを計画している。今年度は、5種類の側鎖を有するルテニウム錯体を合成し、金電極への吸着能を調べ、2本のアミノ基を有するもの(錯体A)が強く吸着し、電極からの脱着も用意であるため電極の再利用が可能なる利点があるため、最適であると結論した。リポソームの調製は、エクストルダー法(フィルター:50nm)を用いると得られた粒径は80nm程度であった。超音波法によるリポソールの粒子径は均一でなく、感度が低いことが示された。抗原抗体反応により電極上に結合したリポソームを効率的に破壊することも重要な問題であるので、化学的(有機溶媒、界面活性剤)及び物理的方法(加熱、凍結)について検討し、アルコール類の添加が有力であり、特にエタノール添加が最適であることが分かった。その他、金電極加熱処理時間、リポソーム粒子サイズによる感度の最適化を行った。次に、牛血清アルブミン(BSA)を分析対象としてBSA抗体修飾リポソームを調製した。金電極上にはBSAを固定化し、最適条件下、競合法によりBSAの測定を行うと10^<-9>〜10^<-6>g/mLの濃度範囲で定量可能であった。通常使用されている高感度分析法であるELISA法(サンドイッチ)では10^<-8>〜10^<-5>g/mLの測定範囲であった。本手法は、感度が1桁良い上に抗原抗体反応が一度で済むために測定時間1時間半とELISA法より短時間であることが明らかとなった。今後は、さらに感度を向上させるために、リポソーム濃度及びリポソーム表面の抗体数の最適化を行い、実試料としてインフルエンザウイルスのヘマグルチニン及びウイルスそのもの(不活性化)を測定する予定である。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
ITE Letters 7・3
ページ: 276-280
Chemical Sensors 22,supplement B
ページ: 58-60
Revue Roumaine de Chimie 51・7-8
ページ: 839-842