研究概要 |
1.デンドリマーの合成・精製:マロン酸エステルとアクリル酸エステルのMichael反応は7M KOH水溶液中で90%以上の収率で2:1付加物1を与え、デンドリマー合成の安価かっ簡便に得られる出発原料となることを前年度までに確認している。脱炭酸後の生成物2とジオールとの反応によるビルディングブロック3の合成について種々条件検討をおこなったが、最適条件の確立にはいたらなかった。ビルディングブロック3を用いて末端数32のデンドリマーまでを合成した。精製はゲルろ過、透析膜の利用など種々検討したが、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離が最も純度の高い精製物を与えた。G3(末端数32)で分子量分布<1.07のものが得られている。 2.デンドリマーの粒子径測定による粒子形状特性の検討:動的光散乱法を用いてメタノールおよびテトラヒドロフラン中でのG0(末端数4)からG3粒子径の測定をおこなった。これら溶媒中では世代数が増すに従いデンドリマー末端が内側に入り込み、計算上の値から大きくずれていることがわかった。 3.NMRによる粒子形状特性の検討:500MHzのNMRを用いて種々の測定法を併用して、G3デンドリマーのHおよびCのシグナルの帰属をおこなった。さらに、NOESY, ROESY測定により、末端のt-ブチル基が分子のかなり内側のエチレンオキシ基と相関していることを見出した。これは粒子径測定の結果を支持するものである。 4.デンドリマーの細胞毒性の検討:アセト酢酸エステルとアクリル酸エステルを出発物質とし周辺部にテトラエチレングリコールを導入したG0からG4までのデンドリマー(前年度合成)をHL60細胞に加えて培養し、細胞の生存率を調べた。その結果、G0(末端数4)以外は細胞毒性がかなり高く、このままではDDSへの応用には不適であることが判明した。
|