研究概要 |
今年度は水銀イオン応答遺伝子による蛍光蛋白発現系の作製と蛍光分析への応用について検討した。水銀イオン耐性大腸菌は水銀イオンに応答する遺伝子merRをもつ。このmerRにより発現される水銀制御蛋白MerRによる蛍光蛋白発現系とプラズモン増強励起を組み合わせた水銀イオンの蛍光分析系を考え、実証研究を行った。MerRの水銀結合ドメインMBDを2つタンデムにつなぎ、両端に黄色蛍光蛋白のN,C末端をそれぞれ融合させ、蛋白をマイクロ流路に固定化するのためのstrep-tagを含むコンストラクトを作製した。YFPを用いたのはRFPに比べて励起波長が短くプラズモン増強の観点からは不利となるものの、蛍光収率が高いためである。しかし、コンストラクトを組み込んだ大腸菌は水銀イオン曝露前に既に強い黄色蛍光を発しており、菌体内で発現した水銀イオン応答蛋白の一部が既にYFPを再構成していることがわかった。この蛋白をアフィニティーカラム精製した後、水銀イオンに対する応答を検討したところ、低濃度領域では蛍光強度の増大がみられ、水銀イオンに対する応答が確認されたものの、高濃度では逆に蛍光強度が低下し、水銀イオンによる消光が起きていることが示唆された。次に菌体そのものを用いた場合についても、低濃度領域では蛍光強度の増大が見られ、水銀イオンに対する応答が確認された。そこで、菌体をアミノ修飾ガラス製マイクロ流路に固定化して分析を試みたが、菌体の固定化の再現性が低く、固定化法を洗練させる必要があることが判明した。
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