研究概要 |
拠点配置とネットワーク設計の統合モデルとしては,その前提条件として大別して次の2種類のものが考えられる.第一の条件は,成熟都市,すなわち都市全体の人口(需要)を一定とするものである.現実の問題としては,先進国の成熟都市における都市空間構造の整備の問題に対応する.第二の条件は,成長都市,すなわち都市全体の人口(需要)が増加するものである.現実の問題としては,発展途上国の成長都市における都市空間構造の整備の問題に対応する.平成19年度は,後半の成長都市における問題のモデル化,すなわち,(2)拠点配置とネットワーク成長を同時に考慮した都市成長のモデル化を行った. まず,(3)人口成長下の成長都市における拠点配置とネットワーク成長のモデル化を行った.人口分布および交通需要の増大を仮定した上で,上述の同時決定モデルの具体的定式化を行った.拠点配置とネットワーク形状は,(a)拠点数,(b)交通技術永準,および(c)その進歩速度等の条件に加えて,(d)人口増大プロセスの仮定にも依存するものと考えられる.そこで,いくつかの人口増加ルールを設定し,条件の多様な組合せについてシミュレーションを行い,結果として組織化,形成される都市空間構造のどのような違いが生じるかを分析した.さらに,(4)成長過程の違いによる都市空間構造の形成過程の差異の分析を行った.具体的には,(a)交通条件とは無関係に(外生的に)人口が一定の法則で増加していく場合,および(b)交通条件の変化に依存してその場所の利便性の向上を介して人口増加が決定される場合に分けて分析を行った. その結果,初期に敷設されたネットワークの方向に成長する傾向があること,最終形が優れているものでも途中段階の成長が常に優れているわけではないこと,交通路の速度の違いは平均所要時間の減少に効果を与える地域の違いとなり成長パターンを変化させること,速度が速い場合のネットワークは放射状に分岐しながら成長する傾向にある一方で,遅い場合のネットワークはある一方向に成長する傾向があることなどの基本的特性が明らかとなった.
|