研究概要 |
本年度は,「負のDEA(Data Envelopment Analysis)」を導入し,日本のQOL(Quality of Life;生活の質)変化をQOLの悪い面に焦点をあててみると同時に,個々の都道府県分析を行なった。 本研究は,「日本のQOLは,1975-2002年の28年間に如何に推移してきたか」を定量的に測定することを目的とし,社会指標パネルデータ(47都道府県×28年)に,4DEA出力(病床数,平均県民所得,水質,下水道普及率)および4DEA入力(自殺率,犯罪発生率,交通事故発生率,企業倒産率)をもつ,DEA/MI(Malmquist Index)分析の適用を試みている。すなわち,MI指数をCU(Catch-Up),FS(Frontier Shift)指数に分解し,後者により日本のQOLの推移を検証しようとする。また,通常用いられる前年度に対する変化を表わす指数ではなく,基準年からの累積変化を表わす累積指数を考案し、日本のQOLの変化をグラフ化できるという特徴ももつ。 本年度は,DMU(Decision-Making Unit; DEA分析の対象)の優れている点に注目する通常のDEAによる上記の分析に加えて,DMUの劣っている点に注目する「負のDEA」による同様の分析を実施した。これにより,「1980年代後半のバブル期に上昇し,続く失われた十年(1990年代)に下降した」というQOL推移の実証結果が,QOLの良い面をみた場合だけでなく,悪い面をみた場合にも適合することが確かめられた。更に都道府県分析では,東京都と大阪府の比較により,前者の優位性を明らかにし,また当該期間において,日本のQOL向上に貢献した都道府県,QOL下降に責任を負うべき都道府県も明示できた。
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