研究概要 |
本研究の目的は,「相互評価」に対する数理モデルの構築と解析手法の開発をするとともに,その応用分野を拡張することにある.そしてこの目的に沿って,定性的要因を扱う相互評価法であるANP, AHPに対して,評価行列の新たな分析法である最小χ自乗法の最適化モデル分析を開発した.一方,定量的要因を扱う相互評価法であるDEAに対しては主双対モデル分析法を開発した.提案したモデルと開発した分析法は,経営上の戦略的意思決定にのみならず,スポーツでのチーム力測定等で有用であることを検証した. 評価を受ける対象が評価をする側から一方的に評価を行なうだけでなく,評価を受ける対象から評価する側への評価を取り込んだ双方向の評価システムを相互評価システムと呼ぶ.相互評価の扱う要因の性質が定量的あったり,定性的であったりする.定性的要因を主に含む相互評価システムに対するシステムアプローチの1つとしてAnalytic Hierarchy Process(AHP)とその発展形であるAnalytic Network Process(ANP)がよく知られている.一方,定量的要因を主に含む相互評価システムに対するシステムアプローチの1つとしてはData Envelopment Analysis(DEA)が近年盛んに研究され,多くの適用例が報告されている. AHP, ANP, DEAでは事例報告の研究数の多さと比較して,解析方法の特徴付けや妥当性に関する理論研究は事例報告に比較して少ない.よくある理論研究としては,統計的手法との組合せやデータ変換法の変更などであり,返って分析手順の複雑化をもたらすことになる.これはAHP, ANP, DEAにおける解析を手順ベースで考察することによるためである.本研究では,相互評価に対する分析法AHP, ANP, DEAに対する最適化モデルとして捉えなおすことにより,これらの解析法の再構築を目指した.この目的の下,AHPで従来用いられた分析法である固有ベクトル法と提案した最小モデルχ自乗法は最小ノルム点問題として統一的枠組みで分析可能であることを示した.一方,DEAでは提案した主双対モデル分析ではDEA多段階分析で生じる複数解の問題点を解決するなどの研究成果を得た.これらの研究成果はEJOR, JORSJ等国内外の学術雑誌に掲載に至り,学会等での口頭発表を行った
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