研究概要 |
本年度は,ソフトウェア製品品質向上のためのプロジェクトマネジメント(PM)技術を中心に議論した.以下は,本年度の研究成果であり,所期の目的を達成した. (1)ソフトウェアプロジェクト推進において発生する問題の原因系を分析し,プロジェクトリスクの軽減策を実施し,これを追跡管理するリスク管理手法を提案した. (2)開発作業の進捗状況が見えるようにし,プロジェクト計画を外れる徴候を捉えて管理する技術として,アーンド・バリュー・マネジメント(Earned Value Management,以下EVMと略す)の効果的活用方法を考察した. (3)ソフトウェア製品品質とプロセス品質を保証するために,品質保証システム構築のためのフレームワークを提案した.ここで,品質保証計画の策定と,開発プロセスの上流工程における品質管理技術としてのレビュー活動と品質保証の関係把握に焦点を当てた. (4)上記の考察により最終製品品質に影響を及ぼすプロセス品質要因として,品質保証要因およびマネジメント要因という2種類に大別して導出した.前者の品質保証要因としては,レビューマネジメントに関する設計レビュー遅れ率と開発規模当りレビュー回数,レビューア評価技術に関する.レビュー評価平均点,テスト項目抽出技術に関する総合検証項目数を抽出した.また後者のマネジメント要因としては,リスク管理活動に関するプロジェクト開始時リスク度とリスク度軽減速度,プロジェクト管理活動に関する開発規模当りEVM回数,製品品質保証活動に関する開発規模当りレビュー回数とレビュー合格率を抽出した.さらに,これらの実際のソフトウェアプロジェクトにおいけるプロセスデータを使って多変量解析法を適用し,ソフトウェア製品品質(納入後検出フォールト数や総合検証検出フォールト数)を予測するための統計モデルを導出できた.このとき統計的に有意と判定されたプロセス品質要因は,他のプロジェクトにおいても有効であると考えられる. (5)ユーザニーズに対するテスト項目の漏れを防止することにより製品品質を向上させるために,テスト品質レベルの向上と品質保証技術の標準化について考察した.特に,テスト項目の抽出とテストデータの作成を容易にするソフトウェア品質特性の定義方法と,ソフトウェア製品品質の推定精度の高いソフトウェア信頼性評価技術に焦点を当て,後者についてはいくつかの技術を開発した.
|