需要の変動と長期予測に関して、パネルデータ分析の可能性に着目し、需要予測の方法論を検討し、電気通信事業とある程度類似性のある電力事業(分析対象は東北地方の県別の電力需要)について実際に適用して一定の成果を見た。 具体的に言えば、料金等需要に影響を与える要素に関してはベクトル自己回帰モデルで予測を行い、需要関数自体については双方向ランダム効果モデルにより、地域的な変動要因と時間的な変動要因を分離することが出来た。その結果、以下のようなことが明らかになった。 (1) パネルデータ分析により、精度の高い需要関数を推定することが出来た。ただし、価格弾力性の値が従来報告されていたものよりもかなり高いことが明らかになり、その原因を検討する必要が出てきた。 (2) 上記モデルで長期予測を行った結果、少子高齢化に関わらず電力需要は今後も増大することが示された。ただし、こうした減少は電力料金の低落傾向からもたらされているため、燃料資源価格の高騰を考えるならば、予測結果は現実的ではない。また、県内所得に対する電力消費支出の比率も、今後増大に転じる傾向がある。 これらの結果は、研究の目的に照らし合わせ、以下のような意義を持つものと考えられる。すなわち、需要関数の推定結果を長期予測につなげることにより、推定結果の妥当性を検証できる可能性を示すことが出来たこと。従来の需要分析においては、データ期間のみを対象として推定が行われてきたが、本研究の目標とするシミュレーション・モデル構築においては、将来予測結果の妥当性が重要となり、本結果はそのための一つのステップとなる。
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