高架橋には様々なタイプが存在しているが、設計時にはその上を走る車両の応答は考慮されていない。このため、その水平方向の振動の1次モードの固有振動数で1〜2Hz程度と、車両の横振動、ロール振動の固有振動数と同程度の値を持つものも少なくなく、地震の際に高架橋の揺れが車両の応答と共振してしまう場合が考えられる。現在存在する代表的な高架橋について、文献調査を行って代表的な振動特性を把握した上で、ドライビング・シミュレータを用いた実験を行った。高架橋は考えられる範囲内で固有振動数、減衰比を変化させて、車両にとって危険となる高架橋パラメータについて検討した。ただし、車両に外乱として入力される地動加速度は高架橋によって増幅されるが、この段階では車両と高架橋の連成は考えていない。 車両の応答を考える際には、ドライバの応答も考慮した。したがって、車両に関する応答データはもちろん、ステアリングを介してドライバにかかるセルフアライニングトルク(SAT)等の物理データ、脳波、心拍等の生体データの測定を行った。脳波においてはアーチファクトとよばれるノイズが大きく、有効なデータが得られていないが、車両応答、心拍の測定では高架橋のパラメータによって大きな違いがでており、ドライバに対してヒアリングも行うことによって、客観的・主観的評価を行った。 結果としては、車両の固有振動数に近い1〜2Hzの固有振動数で車両自身の応答が大きくなると共に、ドライバの生体反応からも危険度が増していることが確認された。減衰比に関してもこれが小さいと応答が大きくなることから危険度が増すことが確認されている。共振現象のおこならい低周波でも、減衰が小さいとドライバの運転にふらつきが見られることも確認され、地震時の車両側の応答を考える上で重要な測定データが何であるかが決定できた。
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