研究概要 |
(1)昨年度に行ったアンケート調査結果を利用して一般消費者のリスク認知の再検討を行った。その結果,特定食品のリスクに関わる一般消費者とリスクの専門家とのリスク認知の差は,従来指摘されてきた,1)情報的格差,2)「恐ろしさ」や「未知性」といった恐怖心,3)プロスペクト理論やフレーム効果等で知られる認知バイアス,といった要素だけではなく,4)科学的リスク評価に対する壊疑や,5)リスク管理過程で過失や不正による事故が生じるかも知れないという不信が,要因として大きいことがわかった。したがって,リスクコミュニケーションにおいては,その1)量,2)質,3)技法に留意して,当該食品のリスクについて一般消費者に理解をしてもらうだけでなく,一般消費者が4)科学的リスク評価を得心できる情報の提供と,5)リスク管理上の事故を防ぐのに有効である安心できるような措置とその説明が重要であることを明らかにした。 (2)さらに,本年度は,昨年度の調査結果の内容を織り込んだ,消費者の食に関するリスク認知と態度を明らかにするための追加的アンケート調査を実施した。その結果,消費者のリスク認知と態度には一定のパターンがあることがわかった。すなわち,1)科学や人工を求めるのは誤っており,昔の自然に近い生活に帰るべきだと考える消費者や,2)政府または業者に強い不信を抱く消費者がいる一方で,3)食は基本的に安全であり,もっと気にせず食生活を謳歌すべきだという消費者群が存在する。しかし,大半は4)漠然とした不安を抱いているが,特に何も対応していないという消費者である。そして,そのいずれかによって,リスクコミュニケーションの効果が異なることがわかった。
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