多数の傷病者が発生する大震災等では、傷病者が一部の病院に集中したり、病院への搬送活動における混乱が発生したりすると想定される。このような状況下で、施設配置、交通ネットワークや救急体制を包括的に評価するための災害医療搬送シミュレーションモデルを開発した。 このモデルは、医療活動と救急搬送活動における情報システムの効率性を評価するとともに、病院や道路等の施設整備と医療体制を相互的に評価することで、効果的な施設整備の検討に資することを目的としたものである。 平成20年度は、東海地震による被災を想定した静岡市内の救急搬送シミュレーションを実施し、本研究で構築したシミュレーションモデルの有効性を検証した。なお、シミュレーションを単純化するため、被災地は静岡市のみであり、周辺市町村は被災していないと仮定したが、周辺市町村からは傷病者の搬送手段(救急車)の応援を得るとともに被災者を周辺市町村の病院にも搬送するものとしている。 平成20年度の研究で、静岡市を対象としてシミュレーションを実施し、本シミュレーションモデルが救急搬送計画を立案するためのツールとして有用であることが検証できた。また、今回のシミュレーションでは、30秒毎の計算を3日間分実施したが、演算時間は通常のパーソナルコンピュータで数分程度で実施でき、実用的にも十分なものであった。
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