研究概要 |
本研究の目的を達成するために,地形の保存状況を考慮し火口の西側約1.5kmにある古坊中遺跡内の3箇所(A,B,Cトレンチ)で発掘調査を実施した.同時に発掘で採取した資料の分析を行った. 1.火山灰層の識別 Aトレンチでは,2-3,2m掘り下げたところに遣物包含層が認められ,その上位に約80層の火山灰が認められた.Bトレンチでは約70層の火山灰が,Cトレンチでは約70層の火山灰が観察された.これらの火山灰層は大きく上下に区分された.上部は中岳の灰噴火の活動によるもので,下部は水蒸気爆発またはマグマ水蒸気爆発の産物を主とすることがわかった. 2.出土遣物や遺構 Aトレンチからは木製椀,板,土師器皿,瓦器片,炭化物などが,Bトレンチからは明代の染付凪が出土した.Cトレンチからは遺物は出土せず、土塁や焦土に加えて炭化物が出土した.これらの遣物は15世紀から17世紀初期のものと推定された. 3.出土炭化物と腐植土層の炭素14年代 出土した炭化物と腐植土層から9サンプルを選定し,年代を炭素14年代法で求めた.年代は西暦1400年代から1700年代を示した. 4.古文書の記述の解読 阿蘇中岳の噴火記録は古くからあるが、噴火の様式やその規模については記述から解読する必要がある.古文書からは、古坊中が放棄されたころに水蒸気爆発またはマグマ水蒸気爆発が頻繁に起こっていたことが推定された. 5.研究成果の総括 上記1〜4の結果から,阿蘇中岳西側の古坊中一帯においては、西暦1400年ころから中岳の水蒸気爆発またはマグマ水蒸気爆発が活発となり,古坊中が放棄または衰退したことが明らかになった.今回の調査・研究により,古坊中と中岳の噴火活動の特徴の関係が、より鮮明になった.
|