本研究では、中米・エルサルバドル共和国中部に位置するイロパンゴ・カルデラにおける4世紀の巨大噴火の詳細を明らかにし、この噴火がメソアメリカの先古典期文明に与えた影響について再評価することを目的としている。 このため、初年度にあたる本年度は、現地を2回(平成18年8月9日〜9月5日、および、平成19年2月16日〜3月16日)にわたり訪問し、以下のような調査を行った。 1.エルサルバドルの火山・地質関連研究機関(SNET、LAGEO)の現地研究者との情報交換 2.エルサルバドル中部地域での現地踏査(露頭観察、試料採集) 3.ホンジュラス共和国コルテス県ヨホア湖周辺での現地踏査(露頭観察、試料採集) これらの結果、イロパンゴ・カルデラを起源とする火山灰について、火砕流として堆積した地域がほぼ明らかになった。一方、降下火山灰は、火山の一般風向風下側とは逆の方向、すなわち、エルサルバドル東部側に相当量分布する可能性があることを示すデータが、現地研究者やドイツの調査から得られつつあるとの情報を得た。また、ホンジュラスのヨホア湖の湖底堆積物中に当該火山灰がみられるという情報があったが、本研究に先立つ湖底堆積物の調査、および、本研究の火山灰層の調査においても、当該火山灰とみられる堆積物は見出されなかった。また、当該噴火は、これまで先古典期末とされてきたが、近年、それより新しい年代を示唆するデータが得られてきているため、年代決定の精度を向上させるべく、火砕流堆積物中から炭化木等の年代試料を採取した。 次年度は、本年度の成果をもとに、現地研究者との情報交換を維持しつつ、エルサルバドル東部地域、および、西側遠方でのグァテマラ共和国内での現地踏査を進める一方、年代試料の収集と年代測定をすすめる。これにより、考古学研究の議論に足る精度で、当該噴火の実像を明らかにしていきたい。
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