研究概要 |
本研究は、中米・エルサルベドル共和国中部に位置するイロパンゴ火山で4世紀ごろ生じた巨大噴火の詳細を明らかにし、この噴火が当時のメソデメリカ社会に与えた影響について再評価するため、2年目にあたる本年度は、次のような研究活動を行った。 1.前年度の現地踏査で収集された試料の放射性炭素年代測定 2.世界都市火山会議(2007年11月、長崎県島原市)におげる、昨年度の成果発表 3.エルサルベドル束部地域およびニカラグアでの現地踏査(平成20年3月、計3週間) 4.現地ならびに海外(ドイツ)の研究者との情報交換 噴火年代は、従来の先古典期末とされてきたが、本研究では、Dull(2001)が提起した、古典期初期頃の年代を支持するデータが得られた。また、現地の考古学発掘調査でも、これを支持する成果が得られつつある。一方、降下塞山灰の分布は、エルサルバドル西部では従来言われていたほど厚く堆積していないことは、すでに、本研究の前年度の調査で明らかにしていたが、今回、エルサルバドル東部地域で、従来言われていたよりも厚く堆積することが判明した。すなわち、降下火山灰は、従来いわれていたように西方に分布するのではなく、東方に分布する可能性がある。このことは、ドイツのGEOMARが2007年までに行った海底掘削調査において得られたデータからも支持されることが判明した。 最終年度にあたる平成20年度は、次のような調査・研究を行っていく必要がある。 1.現地踏査で収集した試料の年代測定 2.より東方の地域,特にニカラグアでの現地踏査 これらにより、イロベンブ火山の噴火の生じた時期について、考古学的研究に足る精度の年代を示す。また、火山灰の陸上の分布地域と降灰量を詳細に明ちかにし、これに海底掘削調査の結果を補完して得られるデータをもとに、当該噴火が当時のメソアメリカ文明にもたらした影響の範囲と程度を評価したい。
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