研究概要 |
本年度においては,平常時における社会インフラの相互依存体系を記述するため,ネットワーク構造でモデル化するための検討を行った.これと並行して,モデル化したネットワーク構造と様々な被害パターンとの組み合わせが,被害連鎖に与える影響について明らかにし,重要インフラ防護に関する重要な知見を得た.得られた主な成果は以下に示す通りである. 1.個別インフラのネットワークモデル化 社会システムを構成する個別の社会インフラについて,階層構造・スモールワールド性・スケールフリー性といった特性に注意しながら,わが国の航空路線網と新潟県中越地震による被災道路網を対象としてネットワークモデルを構築した. 2.ネットワーク構造と被害パターンが被害連鎖に与える影響の考察 被害連鎖の発生は,ネットワーク構造特性とネットワーク上に生じる被害パターンの組み合わせで規定される.1.のネットワークモデルを用いて,シミュレーションにより自然災害・事故・テロなどの事象による被害パターン(ランダム被害と狙いを定めた標的被害)を生成し,耐障害性と耐攻撃性という観点から,被害連鎖に与える影響を考察した.新潟県中越地震による被災道路網については,被害と復旧の実パターンとの比較考察を行った.その結果,スケールフリー性を持つネットワークは次数の高いハブへの攻撃に対する脆弱性が極めて高いこと,グリッド型のネットワークでは被害パターンの影響をあまり強く受けないこと,などが明らかにされた. 3.社会インフラの相互依存体系のネットワークモデル化 個別の社会インフラは互いに結び付けられ,相互依存性を持った全体系ネットワークを構成している.ここでは,供給系ライフラインシステムに複合的に依存している製造業を対象として,ライフラインの同時被災下での被害波及モデルを構築し,東海地震を対象としたケーススタディーを行った.
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