研究概要 |
1.ネットワーク上を伝播する影響波及構造の事例調査と分析 既往研究を発展させて,社会インフラの影響波及構造のモデル化を行うため,波及構造の基本形態として「物理的被害波及」,「機能的被害波及」,「複合的被害波及」,「復旧時相互連関」,「システム代替性によるバックアップ機能」の5種類の構成を考えた.これらのうち最も影響波及効果の大きな「機能的被害波及」の事例分析として,2006年首都圏大規模停電を対象として調査を実施し,被害の全体像と時系列的展開をまとめた.調査結果に基づいて,バックアップ施設などの停電影響波及に関わった要因を明らかにし,機能的被害波及のモデルの骨格を「システム内の機能的被害波及」「影響顕在化までの余裕時間」「システム間での機能的被害波及」「バックアップ施設」と規定した. 2.地震動と被害パターンのシミュレーション 被害波及のシミュレーションを行うにあたって,前提条件となる被害パターンは,自然災害・事故・テロなどの事象によって異なった様相を持つので,地震動シミュレーション等により,局所的〜広域的な地震動分布のパターンを生成するとともに,小被害〜中被害〜大被害という被災規模にも変化を持たせ,被害連鎖に与える影響について考察した.また,ランダム被害と狙いを定めた標的被害との違いについても考察を行った. 3.社会インフラの被害波及のシミュレーションモデルの構築 社会インフラの被害波及を扱うことのできるシミュレーションモデルのうち,機能的被害波及に関するプロトタイプを構築した.単一のシステムではなく,複数システム間の連結性を考慮して,複雑ネットワーク上での影響波及を定量的に評価しうるモデルとした.
|