吹雪による雪面の削剥率を直接測定する風洞実験を行った。この実験では、風洞底面に雪を敷き詰め、その一部にほぐしたしまり雪を入れた20cm×20cmのトレイを埋め込み、風上より吹雪粒子を供給して発生させた吹雪中に一定時間曝露した後に、トレイ内の雪の重量変化を測定して削剥率を求めた。本年度は特に削剥率の温度依存性を明らかにするため、雪温を-15℃〜-2℃の間で変化させて実験を行った。なお、トレイ周囲の雪面は、雪粒子同士の結合がない軟雪と結合が強固な硬雪の2種類を対象とした。 この結果、周囲が軟雪の場合で温度を固定したときには、削剥率は風速とともにほぼ直線的に増大すること、ならびに周囲が硬雪の場合で風速を固定したときには、削剥率は雪温が-10℃以上において0℃に近づくとともに低下することを明らかにした。この温度依存性の理由について検討するために、雪粒子の反発係数の温度依存性の把握と跳躍粒子の速度の測定を行った。 従来は、削剥の素過程である風による粒子の取込過程や粒子の衝突によるスプラッシュ過程削剥の研究は雪粒子の結合がない場合を対象として行われてきた。しかし、現実の雪面は、雪粒子同士の結合や付着があるために、削剥率はそれらの影響を受け低下する。本研究で得られた知見により、雪面条件を硬度で表すとともに、雪温をパラメータとして削剥率を定式化することを可能とするものであり、吹雪の発達を記述する際の下端の境界条件として用いることが出来、吹雪モデルの高度化に寄与するものである。
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