1。精子形成過程各段階の生殖細胞単離法の確立:生殖細胞におけるエピジェネティカル変動の解析には、迅速で高純度の各分化段階の生殖細胞の単離が必要不可欠である。そこで成体精巣から単離した生殖細胞をHoechstとPIで染色し、FACSを用いて、パキテン期精母細胞と半数体精細胞をそれぞれ、80〜90%の純度で精製出来る系を確立した。また、精子形成開始直後の最も精原細胞が多く含まれる生後1週目の精巣から単離した細胞を抗Ep-CAM抗体で表面ラベルして、FACSで分離することで精原細胞を90%<の純度で精製できる系を確立した。 2。精子核内ゲノム再メチル化領域の解析:精子形成過程でCpG非メチル化イントロンレス遺伝子が精子核内でヒストン領域に存在し、再メチル化される可能性が示されたので、一般性を調べるために、より多くの遺伝子の解析を試みた。UniGeneデータベース検索によって精巣だけでESTが得られる遺伝子を246見いだし、その中の51個のイントロンレス遺伝子から、39個の精巣生殖細胞特異的遺伝子を同定した。そこから20個を選択し、メチル化を調べ、16個が精子形成過程特異的に低メチル化であることを明らかにした。現在、精子核内動態を解析中である。 3。精子形成過程におけるヒストンメチル化と遺伝子発現との関係:精子形成過程では、減数分裂後多くの遺伝子が発現する。これらの中にはプロモーター付近のCpGメチル化によって発現が抑えられ、脱メチル化が発現に必須のものが存在している。このCpG脱メチル化は精原細胞で起こり、その後、ヒストンメチル化(H3K9me1/me2)により抑制が持続し、パキテン期以後、H3K9me1/me2の脱メチル化に伴って遺伝子が発現できようになる可能性が示された。
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