研究課題
細胞周期のG1からS期(DNAの複製の開始)への進行はRb-E2Fにより高度に制御されており、Rb-E2F経路の異常は多くの癌において認められる。E2F6はS期においてE2F標的遺伝子に結合し転写抑制因子として働くことやE2F6を過剰発現させると細胞がS期に集積しS期からG2期への移行を阻害している可能性が示されている。本研究では、癌細胞で発現が増加しているSUZ12やEZH2とE2F6との機能的相互作用を明らかにし、SUZ12-EZH2複合体によるE2F6を介した転写制御や細胞周期調節への影響を解析することによって、発癌や癌転移の分子機序の一端を明らかにする。E2F6はYY1などのPolycomb repressive complex(PRC)1サブユニットとの相互作用が示されてきたが、本研究においてもう一つのPRC2サブユニットのSUZ12と相互作用を認めた。クロマチン免疫沈降法によりプロモーター領域にE2F6、SUZ12、EZH2が同時にリクルートしている遺伝子群を同定した。しかし、それらの遺伝子群ではEZH2によるH3-K27トリメチル化は認められなかった。また、EZH2をRNAiにより減ずるとそれらE2F6-SUZ12-EZH2標的遺伝子では予想に反して発現がむしろ減少する傾向にあった。以上よりSUZ12-EZH2複合体の中にはE2F6に結合するものがあり、これらの標的遺伝子ではE2F6の転写抑制をむしろ阻害し、何らかのメカニズムで転写を活性化している可能性が得られた。EZH2やSUZ12は種々の癌細胞で発現が増加しており、発癌や癌転移の分子機序の一部に本メカニズムが関わっている可能性が示唆され、新たな癌治療の標的となる分子経路の解明に繋がった。
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Genes Immun. (In press)
Biol, Blood Marrow Transplant 13
ページ: 315-328