初年度では、CE-MSならびにCE-TOFMSを用いたメタボローム解析法を基盤としたin vitro酵素機能スクリーニング手法にて、大腸菌機能未知タンパク質から酵素を選出するスクリーニングを実施した。基質選出のためのメタボロームには、yeast extractから調製した化合物を主体に、一般的な酵素反応に必要な補酵素などを補ったプールを用いた。2つの機能未知タンパク質に、用いたメタボロームプールに含まれる化合物を基質とする酵素活性を見出し、特定した基質・生成物化合物とタンパク質のアミノ酸配列からデヒドロゲナーゼおよびキナーゼ活性を持つ酵素と同定した。デヒドロゲナーゼ活性を持つ酵素については、より生理的条件での基質特異性を決定するための詳細な解析を行っている。キナーゼの活性を持つ酵素では、ATP/ADPの変換を検出したが、今回のアッセイ方法では本来の基質・生成物を見つけることができていない。これは、CE-MSで検出できない化合物(中性物質など)を基質とする可能性が高い。このようなケースでは、LC-MSやインフージョンMSの使用が有効と考えられるので、今後使用の導入を検討する。 2年目は、in vitroスクリーニングに用いるメタボロームとして、標準試薬から調製するカクテルの使用を検討する。含有化合物数は減る可能性があるが、化合物同定が容易になるので結果として酵素機能同定までの効率が上がると予測している。また、最初に提案したように、酵素の生理的機能の解析には、遺伝子欠損株や過剰発現株のメタボロームプロファイリングが有効と考えられるので、これまでのin vitro解析と並行して実施する。
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