細胞の「かたち」や「はたらき」の違いを遺伝子モジュールで表す研究を行った。まず、データ源として共同研究者から計210細胞/組織に対して35951の遺伝子発現データを取得した。また、ヒトの細胞種約100種類の顕微鏡画像データを共同研究者などから得た。ここから、細胞の形を測定するために、ノイズに強い画像測定法を開発した。さらに大規模遺伝子発現データから網羅的な遺伝子と細胞の組合せのパターンを抜き出すため、高速バイクラスタリング法を開発した。この両手法を用いて、遺伝子発現データからは遺伝子モジュール、細胞画像データからは細胞や核の輪郭と細胞の並び度に関するパラメータを測定した。結果を解析したところ、異なる細胞で共通または発現が逆転する遺伝子モジュールが網羅的に得られた。これにより、デジタルディファレンシャルディスプレイが容易になり、例えば、脳細胞と心臓で全く発現が逆転する遺伝子群としてリセプターやチャネルまた転写因子などを全て含む遺伝子モジュールが探索できていた。実施計画書には記載していないが、細胞の「かたち」を遺伝子発現状態から予測するため、サポートベクターマシンを用いて学習を行い、テスト細胞に対してその形態パラメータ18種を予測したところ、69.1〜78.2%の精度で細胞の「かたち」を予測することが可能であった。本成果は2つの学会講演および3つの論文に掲載され、遺伝子モジュール検索と解析を行うサーバーを立ち上げた。現在は全体をまとめる論文を執筆中である。この成果によって作製された1次および2次データはその価値が認められ、当研究所によってデータベースとして公開をするための整備プロジェクトを平成20年度より開始した。
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