研究概要 |
本研究では核酸-蛋白質相互作用解明のための化学的手法を確立し,さらにその手法をRNAiを誘起するsiRNA(short-interfering RNA)による創薬の基盤研究へと展開することを目的とする.具体的には,7-ブロモ-7-デアザアデニン(7-Br-7-deazaA)および3-ブロモ-3-デアザアデニン(3-Br-3-deazaA)塩基を持つヌクレオシド誘導体をDNAやRNAに導入し,蛋白質との結合や誘起される機能発現の有無を調べる。初年度である平成18年は,1)7-デアザプリンの簡便な合成法を確立し,これにより7-デアザアデノシン,7-ブロモ-7-デアザアデノシン,3-デアザアデノシンおよび3-ブロモ-3-デアザアデノシンの合成を行った.2)これらを含むオリゴマーを合成し,塩基部を変換することによる二本鎖核酸の熱的安定性と高次構造の変化を調べた.その結果,それぞれに大きな違いがないことを明らかにした.3)そこで,まずRNase Hを用いて核酸-蛋白質相互作用の様式を調べた.その結果,3-ブロモ-3-デアザアデノシンを含む二本鎖核酸でのみRNase Hによる切断が起こらず,これにより3-デアザアデニン環の3位ブロモ基が2重らせん構造のマイナーグルーブの立体障害として作用し,核酸-蛋白質の相互作用を妨げることが確認できた.4)次に転写因子であるNF-κBを用いて核酸-蛋白質相互作用の様式を調べた.その結果,7-ブロモ-7-デアザアデノシンを含む二本鎖核酸でのみNF-κBとの結合が起こらず,これにより7-デアザアデニン環の7位ブロモ基が2重らせん構造のメジャーグルーブの立体障害として作用し,核酸-蛋白質の相互作用を妨げることが確認できた. 以上の結果から,申請者が期待した通り,デアザプリン環上のブロモ基がらせん構造のそれぞれのグルーブの立体障害となり,核酸-蛋白質相互作用を妨げることが明らかとなった.
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