研究課題
基盤研究(C)
本研究では、種々の官能基を導入した低分子配位子モジュールを有機化学的に合成し、遷移金属イオンをモレキュラーグルーとして用いてこれらを集積し、モジュール集合体すなわち金属錯体によるたんぱく質表面認識と機能制御を検討することを目的とした。平成18年度には、適切な官能基を側鎖に導入したルテニウムトリスビピリジン錯体が、正電荷を帯びたキモトリプシンの表面にマイクロオーダーの解離定数で強く結合し、その酵素活性を阻害することを明らかにした。平成19年度には、混合錯体ライブラリの構築とスクリーニングを行うことで、非対称かつ光学活性なたんぱく質の表面認識に要請される構造条件を、簡便に読み出す手法を確立することを重点目標として研究を進めた。金属イオンをルテニウムから、配位子交換速度の速いFe(II)に変え、4,4'位に種々のアミノ酸を導入した2,2'-ビピリジンを化学合成し、このうち2種類の配位子をそれぞれ1:1の混合比で鉄イオンと混合したトリス緩衝液を調整した。これらの錯体混合液に対し、キモトリプシンおよびトロンビンの阻害活性を、色素含有基質を用いた分光学的手法により評価したところ、正電荷を帯びたキモトリプシンの場合は100%グルタミン酸含有ビピリジンから構成される錯体がもっとも活性が高かったが、pI=7付近のトロンビンでは、リシン100%の場合よりもグルタミン酸とリシンの組み合わせが有意に高い阻害活性を示した。グルタミン酸100%錯体は活性を示さなかったことから、グルタミン酸:リシン=2:1もしくは1:2の非対称トリスビピリジン錯体がトロンビンに対する強い阻害活性を持つことを示している。このことは、たんぱく質表面に対する受容体として、非対称錯体が有用であることを示唆しており、たんぱく質表面指向型阻害剤のリードとして有効であることを明らかにすることができた。
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