研究概要 |
アロエ(Aloe arborescens)由来ペンタケタイドクロモン合成酵素(PCS)及びオクタケタイド合成酵素(OKS)について、X線結晶構造解析に基づき、部位特異的変異を導入し、活性部位キャビティの大きさや形状を変化させることにより、酵素反応基質やマロニルCoA縮合数の人為的な制御に成功した。アミノ酸レベルで互いに91%の配列相同性を示す両酵素においては、III型PKSの活性中心触媒残基Cys174,Phe225,His316,Asn349が保存されている一方で、活性部位キャビティの大きさと形状を規定するCHS残基Thr197,Gly256,Ser338が特徴的に置換されており、これが両酵素の基質及び生成物特異性を決定することを、結晶構造に基づく一連の部位特異的変異により証明した(Chem Biol14,359,2007など)。また、両酵素の活性部位キャビティを構成する207番残基への点変異の導入により、その立体的嵩高さに応じて、マロニルCoAの縮合数を8分子まで伸長可能であること、さらに、PCS F80A/Y82A/M207G三重変異酵素が、活性部位キャビティの大きさを4倍まで拡大させ、マロニルCoA9分子の縮合による、非天然型新規3環性ナフトパイロンを生成すること(JACS 129,50976,2007)などを報告した。今後の課題として、酵素反応基質やポリケタイド鎖長の制御に加えて、閉環・芳香環形成反応機構の解明と人為的な制御にも挑戦していきたい。変異酵素の触媒活性の最適化や、遺伝子導入による新機能賦与生物の作出など、非天然型新規化合物の生産効率の向上と有用物質生産系の構築についても検討を加えたい。
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