前年度、独自に開発したスクアリン酸(SQ酸)含有アミノ酸(ASQ)を含有した、オピオイドペプチド、エンケファリンアナログの合成に成功した.この結果をもとに、新規ペプチド活性評価に取り組んだ.ロイシンエンケファリンの2および3番目のグリシン部位を置換したペプチドと、N末のチロシン部位を置換したアナログを用い、オピオイド受容体の各サブタイプにおける結合活性について評価した.その結果、2および3番目のグリシン部位を置換したペプチドアナログにおいて、弱いながらも結合活性があること、ならびにサブタイプ選択性が認められることが明らかになり、新規ペプチドの薬理学的有効性を示すことができた。これらアナログの温度可変1H-NMRによるアミド水素の交換速度(ケミカルシフト値の変化(Δδ値))の温度依存性を調べたところ、分子内の水素結合形成の関与に乏しいこと、アミド結合に関する回転異性体が存在することを確認した.より詳細な情報を得るため、トリペプチドモデル化合物のNOESY測定を行い、分子間水素の距離を見積もるとともに、回転異性体がトランス型を有利な配座としていることを明らかにした.これらの成果はTetrahedron letters、(2007)に報告した. 次年度の課題はASQ含有ペプチドライブラリーの構築である.そのために必用なFmoc保護ASQアミノ酸の合成をほぼ確立しており、現在、固相合成法への適用を検討中である.
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