前年度までに、スクアリン酸含有アミノ酸をペプチド(エンケフェリン)へ初めて導入することに成功した。あわせて、その立体配座やエンケフェリン誘導体の活性特性を明らかにするなど、本申請の骨子となる部分について成果を収めた。これを基盤として、H20年度は、いまだ実現例のない固相合成法への展開に向けて、その基盤となるFmoc保護基を有するスクアリン酸含有アミノ酸の合成研究に取り組んだ。具体的には、Fmoc基を保護基にもつスクアリン酸含有グリシンを標的として、その合成を試みた。その結果、本申請間において確立した、スクアリン酸ジイソプロピルエステルへのグリシン由来のジアニオン型エノラートの付加反応、保護基のFmoc基への変換、電子吸引基であるスクアリン部位によって加速される脱炭酸反応を経て、目的物を合成できた。これにより、Fmoc基を有するスクアリン酸含有アミノ酸エステルの初めての合成経路が確立できた。本法は原理的にグリシン以外のアミノ酸を利用することで、その他のスクアリン酸含有アミノ酸の合成にも適用可能である。新規アミノ酸誘導体を用いた固相合成への展開の第一段階はスクアリン酸部位へのアミド化(ペプチド化)である。これまでの研究の過程でスクアリン酸ジエステル部位は弱塩基性の条件下、アミンと容易に反応し対応するアミドを与えることを確認している。Fmoc基を有する誘導体における、スクアリン酸エステル部位のアミド化反応は前例がないため、まず液相におけるアミド化を試みた。その結果、従来と同じく、アミド化が容易であることが確認できた。このように、固相合成実現にむけての準備を整えることができた。
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