研究概要 |
当センターに保存されているAspergillus fumigatusを研究材料とし,β-tubulin, hydrophobin, calmodulin遺伝子による系統解析を実施した.Fumigati節は5つのクラスターに分かれ,A.fumigatus, A.lentulus, A.viridinutansとは系統的に異なる新たなクラスターが見出され,6株が確認された.分子系統と生育温度,マイコトキシン生産性,薬剤耐性との相関性を検討したところ各クラスターにおいて差が認められた. 深在性黒色真菌症の原因菌として知られているFonsecaea pedrosoiについて,ITS領域について系統解析を行なったところ,日本産のF.pedrosoiはすべてde Hoog等が新規提唱したF.monophoraであった.日本産の株は,同様の病型であるにも関わらず欧米産の菌株とは異なった種であることが判明した. 韓国慶州市の男性(67歳,農業)の足に生じた慢性皮膚肉芽性病変より分離された菌株は,形態の類似するCephalotheca sulfurea, Albertiniella polyporicolaと比較し,子のう胞子の表面構造が相違し,両種にない殻壁表面の付属糸が特徴的であった.また,28S rDNAのD1/D2領域の塩基配列は(C.sulfureaに近いことより,本菌株はcephalothecaの新種と考えられ,C.foveolataと命名した.本属は真菌症原因菌として世界初の報告である.
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