平成18年度は、定着、および交雑の可能性を検証すべき「危険性のある候補種」の選定を念頭に、在来種の遺伝的特性に関する基礎調査として、ミトコンドリアや核DNAの解析に基づいて、保全対象となる日本の在来種に関して保全単位の基礎となる地域固有性の把握のための解析をおこなったほか、ミトコンドリアのCOI、16S rRNA遺伝子を用いた系統解析によって在来種との遺伝的な近縁性を調査し交雑危険性候補種の選定を行った。また、累代飼育を通じた生活史に関する基礎データの収集も開始した。 野外調査では、琉球列島において、すでに各地に定着し、ヤシ類を中心に著しい被害を与えているタイワンカブトムシと、移入種の可能性が高く近年新たな分布拡大とともにサトウキビ等への被害も報告されているクロマルコガネについて、その発生状況や原産地推定のための遺伝的解析サンプルを採集した。 さらに、海外調査として、日本に輸入される主なカブト・クワガタの原産地である東南アジア諸国のうち、マレーシアにおいて、カブト・クワガタ類の生活史や生態・行動的な特性を野外で確認する。加えて採集圧が現地個体群に対してどのような影響を与えているのかも調査した。 これらの成果の一部は、すでに国内外の専門学術誌への論文掲載や関連学会での講演を通じて公表されている。特に、国指定天然記念物であり、絶滅が危惧されているヤンバルテナガコガネの遺伝的多様性と本種を含むテナガコガネ亜科の系統解析に関する研究成果は、環境省制定の「特定外来生物法」において、ドウナガテナガコガネ属やヒメテナガコガネ属に関して従来の未判定外来生物から特定外来生物への格上選定を審議する際の重要な科学的根拠ともなった。
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