平成19年度は、国内では琉球列島と対馬をはじめとする九州周辺の離島、国外では日本に輸入される主なカブト・クワガタの原産地である東南アジア諸国のうち、タイと台湾において野外調査を実施した。沖縄本島では貴重な保全対象として、外来生物法においても保護されているヤンバルテナガコガネに関する生息状況も実施した。また、対馬の調査においては従来から生息しているツシマヒラタクワガタとは異なる形態的特徴を備えたヒラタクワガタを採集した。ミトコンドリアDNAの解析からは、このヒラタクワガタは台湾のタイワンヒラタクワガタに最も近いことが明らかとなったが、このヒラタクワガタが外来種であるのか否かに関しては今後のさらなる検討が必要と結論された。海外調査においては現地においてカブト・クワガタ類の生活史や生態・行動的な特性を野外で確認し、採集圧の影響を調査した。室内実験では、カブトムシにおいて、日本のカブトムシと外国産のカブトムシ数種の間で、属を越えた種との間でも交尾が成立し、発生はしないものの産卵にまで至る場合もあることを確認し、広範囲に渡る異種間交尾とその後の未受精卵の産卵による在来種の適応度低下という観点から、外来種のリスクが予想以上に深刻であり、警戒が必要であることを明らかとした。また、外来クワガタムシ科甲虫の簡易な識別に役立つDNAバーコーディングの試みも実践した。 これらの調査研究結果をふまえ、研究の最終年度の成果として、1)定着可能性、2)分布拡大能力、3)繁殖力、4)在来種との交雑可能性、5)在来種との競合・捕食の可能性、6)寄生虫・病原菌の伝播の可能性、7)害虫化の可能性、8)輸入・流通量、4)逸出個体の記録、5)人体への影響、などの項目からなる「外来ペット甲虫の生態リスク評価基準」を作成した。 この評価基準をはじめとする成果の一部はすでに内外の専門誌や学会等で公表されている。
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