近畿における雑種タンポポの形成・拡大過程を解明する目的で以下の調査を行った。 1)大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山、三重の7府県で採取されたタンポポのうち、頭花と果実の形態からセイヨウタンポポと判断された486個体について、フローサイトメトリーによる核DNA量測定と葉緑体DNA解析を行い、近畿における雑種タンポポ(セイヨウタンポポ×カンサイタンポポ)の分布を調べた。その結果、調べた個体の70.4%が雑種であり、雑種の割合は地域によって大きく異なることがわかった。在来タンポポのほとんどない大都市の阪神地区と在来タンポポの多く残る小都市では比較的雑種比率が低く、外来タンポポと外来タンポポが拮抗して分布する郊外の中都市で雑種比率が高くなる傾向がみられた。 2)カンサイタンポポ、純粋セイヨウタンポポ、3倍体雑種タンポポ、4倍体雑種タンポポについて各5個体(クローン)から果実を採取し、16℃、24℃、32℃の3つの温度条件で発芽実験を行った。その結果、カンサイタンポポではいずれの個体でも高温による発芽阻害が認められたが、純粋セイヨウタンポポではいずれのクローンでも発芽阻害は認められなかった。3倍体雑種と4倍体雑種では高温による部分的な発芽阻害が認められたが、阻害の程度はクローンによって大きく異なっていた。ワイブル分布モデルを用いて発芽曲線を解析したところ、いずれのクローンでも、4倍体雑種では高温による最終発芽率の低下と発芽速度の低下の2つの発芽阻害が見られたが、3倍体雑種では発芽速度の低下のみが認められた。この結果は、高温による発芽阻害の作用が4倍体雑種と3倍体雑種で異なることを示唆する。
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