研究概要 |
抗糖尿病活性の高いクワ品種を選抜し、その増産方法を確立することを目的とした。桑のαグルコシダーゼ阻害活性と1-deoxynojirimycin(DNJ)量を測定し、阻害活性と、DNJ含量の実態を調査した。さらに、保存品種の場所、株数、表示看板の整備、保存桑園の環境整備も同時に行い、遺伝子保存施設としての環境を整備した。調査した247品種の5月、7月、8月の葉のDNJ含量の平均±標準偏差は、0.052±0.029%(n=82),0.063±0.029(n=83),0.071±0.037(n=82)であった。8月の平均は、5月よりも、有意に増加した(p<0.05)。5月は、0.04〜0.06%の頻度が高かったが、0.14%以上は見られなかった。7月は、0.02〜0.04%の頻度が最も高く、3品種が0.14%以上であった。8月は0.06〜0.08%の頻度が最も高く、0.14%以上が4品種に見られた。阻害活性は、5月(n=111)が65.8±8.3%、7月(n=82)が62.1±11.9%、8月が(n=83)57.2±13.0であった。7月と8月の活性は、5月より高く(p<0.01)、7月の活性は、8月より高かった(p<0.01)。7月採集のカラヤマグワ系は、葉のDNJ含量と阻害活性の相関が高かった(r=0.901,r2=0.811,n=15)。他の系統の、7月の相関係数は、他の系統の5月や8月のそれらと比較して高かった。529試料の阻害活性の平均は62.3%で、60%〜70%の品種の出現率が最も高かった。系統別では、ヤマグワ系、カラヤマグワ系、ログワ系の主要3系統の阻害率の差異はない。季節的消長では、8月初旬採取が高く、8月30日、10月1日と季節が進むにつれて、阻害活性が低下した。葉位別では、上葉位ほど阻害率が高く、下葉位にいくにつれ、阻害活性が低下した。
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