沖縄県の中で健全なサンゴ礁が残っている西表島において、野外観察および操作実験を実施した。サンゴの被度は高いがオニヒトデの食害が広がりつつある渡嘉敷島と、1998年の白化以後サンゴがあまり回復していない瀬底島においても、一部の項目について調査を実施し、3地点の比較を行った。 1)ブダイ類の生息状況と摂餌行動 西表島では前年に比べ生息状況に大きな変化はなかったが、渡嘉敷島ではオニヒトデの食害がさらに広がり、前年と比べてブダイ類の個体数が著しく減少していた。瀬底島ではサンゴの回復があまり進まず、ブダイ個体数も少なかった。3地点いずれにおいても、大型塊状ハマサンゴにブダイ類の食痕と思われる歯形が多数観察されたが、摂餌行動の観察ではかじっている現場は確認できず、次年度の課題となった。 2)ブダイ類の繁殖行動生態と摂餌場所 西表島上原では岸から約500m沖のリーフエッジ(礁縁)で産卵する種が多かったが、産卵時刻と摂餌場所に違いがみられた。早朝に産卵する種は、産卵後に岸近くまで移動して摂餌する広い行動圏をもっていた。一方、満潮時に合わせてさまざまな時間帯に産卵する種は、おもにリーフエッジとその近くのリーフフラットで摂餌していた。 渡嘉敷島と瀬底島においても産卵場所探しを行ったが、個体数が少ないせいか、産卵行動を観察することができなかった。 3)サンゴ定着板のケージ囲い実験 西表島の2地点においてサンゴ定着用の石灰板のケージ囲い実験を実施したところ、藻類食魚類が多い場所ではケージ外よりもケージ内で藻類の成長がよく、藻類食魚類が少ない場所では両者に有意差が見られなかった。固定ビデオ撮影の解析から、この2地点ではブダイ類だけでなく、ニザダイ類も藻類食者として重要な働きを果たしていることがわかってきた。
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