研究課題
基盤研究(C)
和歌山市を流れる紀ノ川の河口で、海産外来二枚貝コウロエンカワヒバリガイの生活環、生態と、在来生態系への影響を調べるために、2006年4月から2007年3月にかけて野外調査と実験を行い、以下の事が明らかとなった。1.生活環(1)本種は、2006年には、7〜9月に性成熟を迎え、産卵と放精を行い、繁殖した。(2)プランクトン幼生は、8月から10月に、礫やコンクリートなどの硬い基盤、在来フジツボの殻の間などに着底した。(3)変態後の稚貝は、9月から11月にかけて最も多数採集され、その後毎月1.5mm程度で成長を続けた。(4)繁殖中またはその後の親貝と思われる大型個体は、7-9月に死亡率が高かった。寿命または夏期の高温・乾燥による死亡と推察された。2.生態(1)2006年4月に、眼に見える生物を全て剥離して除去した実験区では、6月から在来種であるドロフジツボが多数着底し、成長を続けて、フジツボ群集が形成されたが、9月以降、そのフジツボの殻の間にコウロエンカワヒバリガイの稚貝が多数着底・成長し、12月までには、ドロフジツボを被覆して、死滅させた。何らの操作も加えなかったコウロエンカワヒバリガイの二枚貝床である対照区では、着底した稚貝の数は実験区に比べて有意に少なかった。3.在来生態系への影響(1)上述したように、コウロエンカワヒバリガイは、在来種であるドロフジツボの殻の間に着底して成長し、在来フジツボ群集を死滅させることが明らかとなった。(2)野外にビデオカメラを設置して調査地域に生息する在来巻貝イシマキガイの行動を記録・分析した結果、イシマキガイはもっぱらコウロエンカワヒバリガイの付着してない礫やコンクリートの上で摂食や移動を行い、コウロエンカワヒバリガイの二枚貝床の上では殆ど行動しないことが明らかとなった。コウロエンカワヒバリガイの存在は、在来種イシマキガイの行動範囲を狭めていることが推察された。
すべて 2006
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Sessile Organisms 23巻1号
ページ: 13-24
Venus (日本貝類学会誌) 64巻3号
ページ: 151-159
Assessment and Control of Biological Invasion Risks 1
ページ: 104-112