和歌山市を流れる紀ノ川の河口で、海産外来二枚貝コウロエンカワヒバリガイ(以下コウロエンと略す)の存在が在来フジツボ・ドロフジツボと在来巻貝・イシマキガイに与える影響を調べるために、2007年4月から2008年3月にかけて野外実験を行い、以下の事が明らかとなった。1.在来フジツボ・ドロフジツボに与える影響(野外での除去実験)2007年4月、コンクリート及び自然の転石のそれぞれに、「裸地化⇒毎月フジツボ除去区」・「裸地化⇒非除去区」・「対照区」の3つの実験区を設置し、1年間その後の付着生物の被度を調べたところ、「裸地化⇒毎月フジツボ除去区」では全くコウロエンが付着せず、「裸地化⇒非除去区」では7-8月にドロフジツボが実験区全体を被い尽くしたが9月以降コウロエンがドロフジツボの殻の間や上に着底し、12月以降にはドロフジツボを覆い尽くして死滅させた。「対照区」では、1年間コウロエンの被度が70%以上を占めて安定していた。この結果、外来種コウロエンの着底は、ドロフジツボの存在によって促進されることが強く示唆された。2.在来巻貝・イシマキガイに与える影響(室内での基質選択実験)実験室内の水槽に「付着動物被度0%の石」・「コウロエン被度100%の石」・「ドロフジツボ被度100%の石」を設置して、そこにイシマキガイを放し行動をビデオ録画して分析したところ、イシマキガイが移動・摂食行動を示した時間は、「付着動物被度0%の石」で最も多く調査時間の31.7%であったが、「ドロフジツボ被度100%の石」では調査時間の9.2%、「コウロエン被度100%の石」では0.6%であった。付着動物の存在はイシマキガイの移動・摂食行動を強く阻害するが、阻害の程度は在来のドロフジツボよりもコウロエンのの方が有意に強いことが強く示唆された。
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