1)平成18年度には、サハリン国立文書館およびサハリン州現代史資料館での文献調査を行った。平成19年度は、主として、1980年代後半から1990年代初頭にかけての、サハリン州ソヴィエト執行委員会が、対外経済関係(貿易および外国企業の出資する「合弁企業」に関して、サハリン州独自の規則・規定を制定し、対外経済活動の分野において、ソ連政府(その崩壊後はロシア連邦政府)の決定から相対的に自由な対外経済活動の実施をめざしていたことが明らかになった。また、1990年代初頭における対外経済活動の相手先は、日本、韓国、中国であり、サハリン州が隣接する北東アジアの諸地域との経済的関係の強化を、サハリン州の自立的経済の発展の契機として重視したことが理解できる。 2)同様に、サハリンにおける2つの文書館における調査から、サハリン州が、1994年までの時期、ロシア連邦政府に対して、サハリン州全域を対象とする「サハリン自由経済地域」の設置を承認するよう働きかけていた経過も明らかになった。この構想では、水産資源、森林資源の利用に関する許可権限をサハリン州に委譲すること、また、サハリン州の諸外国との貿易における関税の減免や、外資系企業に対する企業所得税の減免措置などを、ロシア連邦政府の放任を得て、サハリン州が実施することが盛り込まれている。こうした構想に対して、連邦政府の諸官庁が、どのように反応したかを調査することが、今後の課題となる。 3)1980年代末から、申請者が収集してきた北海道とサハリン州(行政レベル、企業団体レベル、妹都市レベル)の交流に関する資料の分析を開始した。上述のサハリン州の文書館での調査の対象となった1980年代末から1990年代初頭の時期には、北海道の企業団体(漁業部門など)や姉妹都市のパートナーが、サハリン州の構想する自立経済の実現に期待を寄せて、関係の強化を図っていたことが指摘できる。
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