現地調査・分析:本年度は西カザフスタンでの現地調査を行った。アクトベでは州の古文書館で史料収集を行い、ロシア革命前後の地方研究機開(「キルギズ地方研究協会」など)の状況や、ソヴェト時代初期の地元の民族運動家の運命などを調査した。また現地の歴史研究者たちと面談し、著作を集め、彼らが西カザフスタンの地方史研究と並んで、ロシア領のヴォルガ・ウラル地域を含めた広域的な地域史研究に活発に取り組んでいることを確認した。アトゥラウとウラリスクでも現地の歴史研究の状況を調査し、地方による研究者の関心の違いを明らかにした。また旧ボケイ・ハン国(1801〜1845)の中心地であるオルダを訪れて遺構を見学し、ロシア帝国が設置した小ハン国という独特の存在である同国の歴史について、博物館などで情報を集めた。これらの町を探訪することによって、遊牧民地域における都市の立地条件をも観察することができた。 成果発表:ロシア革命期のカザフ民族運動において、帝政期の制度的・文化的遺産に基づく隣接諸地域との相互作用や、域内の地方的多様性が重要な意味を持ったことに関する報告を、スラブ研究センター国際シシポジウムで行った。また、地方に着目することによって国家のあり方や異文化表象のあり方についても新しい視点が得られるようになったため、帝国論やオリエンタリズム論についての論文発表・学会発表を行った。西カザフスタン調査については、総合地球環境学研究所の研究会で暫定的な成果を発表したが、より本格的な成果を平成20年度に発表する予定である。
|