平成18年度は、EUの越境地域政策に関する資料の収集と制度分析を中心に行なった。 資料から得られた知見は、以下のことである。欧州における越境地域協力は、複数国家に跨る制度であり、EUの地域政策においてアクターとして認識されており、EUの地域政策においてアクターとして認識されているにもかかわらず、法的には任意団体であり、それぞれの国家内で組織される組織がそれぞれの国家の管轄下に置かれている状況にあり、単一のアクターとしての活動を保障する制度的な枠組みはなかった。このためEUは越境地域政策のひとつとして2006年にEGTCという制度を導入した。EGTCは、越境地域協力の法的な欠陥を修正してユーロリージョンに法人格を与える制度として期待されてきた。しかしこうした制度の導入は国家の関与を強化し、地域のイニシアチブを重視してきた越境地域協力に国家の関与を強めるという可逆現象をもたらせている。 平成18年度の研究成果は、筑波大学大学院人文社会学研究科において実施された国際シンポジウム'International Migration'(平成19年2月2日)、およびスラブ研究センターにおいて行なわれた東欧中域圈研究会において「EUの地域政策と越境地域協力」というテーマで報告を行なった(平成19年3月17日)。論文は「EUと下位地域政策」『EUスタディーズ』(大島美穂編、勁草書房、平成19年6月出版予定)を執筆した。他、佐藤幸男・高橋和・臼井陽一郎・浪岡新太郎『拡大EU事典』(小学館)において、EU下位地域協力、ユーロリージョンなどの解説および200項目を担当した。
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