平成20年度は、EUの近隣諸国政策はEUの側からはEUを域内地域と域外地域を分断しないための政策として評価される一方で、EUの加盟を条件としない地域政策の効果については、地域の側からEUと地域を分断するものであるという批判に対して、地域政策が旧来あった地域協力関係を分断しているのではないかという観点から分析をおこない、東欧では、EU域内諸国がEUにおける東欧諸国の存在意義を高めるためのツールとしてCBCを利用しており、CBCそのものがボトムアップによるものではなくなっていることを明らかにした。それゆえにCBCの制度化において論争となっていたEGTCの評価においても、地域の自立性を高めるという本来意図とは逆に、国家が地域協力に介入するための言質を与えているというパラドックスとなっている。国家以外のアクターの活動に関するアカウンタビリティという当該研究の目的を踏まえるならば、国家が国民に対して負わなければならないアカウンタビリティとともに、地域や国際社会というレベルにおけるアカウンタビリティも問題も同時に存在しており、さまざまなアカウンタビリティをどのように調整するかという問題が今後の検討課題となる。 平成20年度は、当該研究の最終年度にあたるために、研究成果の公表に重点を置いた。平成20年9月に山形大学人文学部において北東アジア学会を開催し、「地域主義の可能性--近代国家体系への挑戦--」というテーマで、国際シンポジウムを企画し、主催した。また、3月には国際関係史研究会において、基調報告「地域主義の行方」と分科会報告で「EUの近隣諸国政策と東欧諸国」というテーマで報告を行った。研究成果は、「EUの近隣諸国政策と東欧」というタイトルで『EUサブリージョンと東アジア共同体--地域ガバナンス間の国際連携モデル構築』(多賀秀敏代表)に収録されている。
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