研究課題
インドの食糧穀物の生産量は、1960年度から2000年度までの40年間に2.4倍増加した。本研究は、インド農業の持続的成長を可能にした制度的要因を、西ベンガル州を事例として、社会経済史の観点から実証的に究明することを目的とする。また国際的要因を重視し、米国が農業政策の形成に及ぼした影響を検証することも、重要な目的である。第3年度の今年度は、インドと米国で最終的な史料調査を行った。インドでは、西ベンガル州政府図書室、西ベンガル州政府土地・地租省図書室、西ベンガル州公文書館、インド国立公文書館、ネルー記念図書館を、米国では米国公文書館、世界銀行グループ文書館を訪れた。これらの史料調査の結果、初年度と第2年度の調査で入手できなかった史料を概ね補充することができた。インドでの調査では、ベンガルにナショナリストの州政府が成立した1937年から、土地改革が実施された53-55年までの間に、州議会に提案された農業関係の法案(小作法、金貸規制法、土地改革法等々)をほぼ網羅的に集めることができた。土地改革以後の時期(主に60年代)の調査が残っているが、補充するのは難しくない。前年度に入手した「オペレーション・バルガ」と呼ばれる刈分小作人保護政策(70年代末以降に実施)の基本史料と合わせ、ほぼ半世紀にわたる農業関連立法の歴史を通観する準備をほぼ整えることができたと考えている。これらの史料は膨大な量があり、いかに活発に農業問題が論議されたかを雄弁に物語っている。不十分な点が多々あったにせよ、国民各階層を巻き込んだ長年にわたる総合的な努力が、農業発展の制度的な枠組みを準備したと言えそうである。米国での調査では、インドを反共の砦と位置づける米国政府が、農村の安定を重視し、経済援助によって農村開発プログラムを展開するにとどまらず、土地改革をも推進した経緯を実証的に明らかにすることができた。
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