最終年度の本年、研究代表者は連携研究者、海外共同研究者らと協働、主としてインドネシアの「パンチャシラ」原則の「域内原理」としての可能性をさらに検証するため、関連史資料、さらに新聞クリッピングの分析考察を深化させた。これにより、「マフィリンド」のトランスナショナルな性格が有する潜在的可能性と限界を歴史的に明らかにしつつ、マフィリンド、 ASEANの構想と盛衰・展開のプロセス、地域的取り組みの実証的分析を通じて「パンチャシラ」原則が内在する普遍的な価値原理と今日提唱されつつある" ASEAN Way"の共通性を強く示唆する結論を導きだした。とりわけ本件究の重要な成果としては、国内原理としての「パンチャシラ」、域内統合原理としての" ASEAN Way"の、統合原理としての普遍性を歴史的・実証的に析出するのみならず、さらにこうした東南アジアの「固有土着」にみえる各種の原理を他地域の地域統合の試み、たとえばユーラシア地域における「上海協力機構」などの理念と実態などに重ねあわせ、すりあわせることによって、東南アジア「固有土着」の原理の柔軟な敷衍によって異質な「地域」同士を包括、新たな「圏域」という概念を提唱する。これによりアジア・太平洋、さらにユーラシアまでをも取り込む可能性を秘めた、独特の" Asian Way"原理を構築提起するに至っている。そこではとりわけ日本の貢献が期待されるものであり、戦後日本の対東南アジア外交が東南アジア国民統合・地域統合に果たした軌跡の分析を通じて、本研究の最終目標である独特の" Asian Way"の提唱に向けた日本外交の蓄積の軌跡を改めて再評価するにいたったことは、大きな意義があるといえよう。こうした成果をふまえ、研究代表者らは当該年度末の1月、インドネシアの連携研究機関と共同して現地ミニセミナーを実施、研究者、学生、市民を対象にこれら成果の一部を紹介還元している。
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