本年度は、(1)長時間労働職場の典型でもある小売業を事例に、個別企業の新たな労働時間管理に関するさらなる資料収集、(2)小売業界で最近進められている労働時間を短縮し、ワーク・ライフ・バランスを実現しようとする新たな取り組みに関する企業の人事担当者及び従業員に対するヒアリング調査、(3)非正規雇用労働者の労働時間の実態及び年次有給休暇取得の手続きや実態に関するアンケート調査および労働組合役員からのヒアリシグ調査等を実施した。 その結果、長時間職場の典型である小売業界に於ける労働時間管理の新しい変化を実証できる1次資料も入手し、またその成果の一部は、「雇用管理の変化と女性の活用-小売企業におけるワーク・ライフ・バランスの試み」と題してフルペーパーを作成し、社会政策学会116回大会で報告した。本研究は、ジェンダー視点に立って企業の職場管理、なかでも労働時間管理を分析したものである。企業の経営トップや人事部からの聴き取り調査をふまえた制度および実施体制の分析を行い、従業員各層のヒアリング調査等から、新制度の意義や影響を明らかにしたものである。女性の活用とワーク・ライフ・バランス推進、及びその方法について具体的に明らかにした。同時に、これまでの長時間労働の職場の時間管理との違いも明らかにすることができた。 また、これまでに入手したEUや日本の文献資料やヒアリング調査等に依拠しつつ、その成果の一部を「ワーク・ライフ・バランス論に関する一考察」、「少子化とワーク.・ライフ・バランス論-その危険性と可能性」などの論文として発表した。また、2009年度中には、編著「ワーク・ライフ・バランスと経営学」が刊行される予定である。
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