本年度はまず、本研究の為の予備調査として、医療職・法曹職における女性労働の既存のデータや、育成機関の制度、関連各団体の行った既存の調査結果について、文献収集・文献研究を行った。その社会的な重要性に関わらず、医療職や法曹職の女性に関して行われた社会学的研究自体がそもそも非常に少なく、その調査の中でも、調査対象人数や回収数が非常に少ない傾向がある。中でも本研究で調査対象としている、専門職の世代間継承や専門職同士の婚姻など階層に関連した研究、および職場・家庭における性別役割分業を対象とした研究は非常に限られていた。ただし、関連各団体等によって行われた調査のデータが存在し、これらの項目について関連する項目も散見された。知見としては多岐にわたるが、医療職および法曹職の女性は家庭内性役割分業という意味では、経済的余裕の為に外的な家事援助も得やすいためか、一般の女性とはかなり異なり、家事役割の負担が低い傾向が窺えた。一方、職域内の性分離に関しては、専門や職位等で性差は少なからず見られる。世代間継承と婚姻の関連については、日本の女性弁護士は、他の国とは違って、父親や夫と法律事務所のパートナーとなるケースが少ないなど、特異な傾向がある。業界関係者への予備聞き取り調査も行ったが、例えば家事分業等に関しては、家事負担の多くを引き受ける者、家事負担は外部の助けを全面的に利用する者など、同じ職業に就く者でもかなりの個人差が見られた。また、本年度は、文献調査をする一方で、公開された大規模社会調査データを用いて、医療職女性の階層状況に関する二次分析も行った。世代内移動データをもとに階層構造内部での保険医療専門職の位置づけを検討した。結果、男性の医療専門職がそれ単独でクラスターを形成するのに対して、女性のそれは離職が多いゆえか事務や運輸・通信職の近くにおさまることが明らかとなった。
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