研究課題
基盤研究(C)
本研究は2004年から2007年にかけて南インドチェンナイ市における面談と調査表によるフィールド調査、および新聞の求婚広告の分析調査に基づいている。質問調査、面談、広告の分析という三種類の調査を組み合わせることにより、南インド都市部のミドルクラスにおけるITセクターを中心とした若い女性たちの結婚戦略の変貌を調査した。調査の結果あらわれてきたのは結婚相手の選択についてはカースト成員権はかならずしも絶対的なものではなく、単なる地位指標のひとつとしてクラス意識のなかに取り込まれている点である。特にIT部門という1990年代にインドの市場開放にともなって出現してきた新しい職種においては女性の恋愛婚および恋愛見合い婚への希求が非常に高い。これは専門性が高く高給が保証され、女性の経済的自立が若年層においても可能となっている点と連動している。従来型の婚姻選択は親族を中心とするカースト内での地位に基づいた見合い型カースト内婚であったが、このような新種のセクターにおいては親族内の年長者が及ぼす結婚への影響が減じつつある。そしてむしろ、大学や職場などの友人関係にみられる横のつながりによる水平的仲間関係(ピアグループ)の及ぼす影響が大きい。ピアグループが社交だけでなく婚姻選択におよぼす影響は確実に増大しており、そこでクラス編成の重要な差異化がおこなわれている。この点をさらにインドの求婚広告の分析によって考察すると、高学歴の女性たちが望ましい配偶者要件としてあげている志向のなかには差異化志向としての教育・職種・さらに趣味や人生観の共有といった点への言及がみられる。それらがブルデューの論じる社会資本、経済資本との交換可能性をめざしたより多くの指標によるクラス性の表現となっており、インドのITセクターをはじめとした高学歴女性たちの婚姻戦略が変貌をとげていることを如実に示している。
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国立民族学博物館研究報告 32(査読中)
駒澤大学総合教育研究部紀要 第二巻(印刷中)
Komazawa University Journal of The Faculty of Arts and Sciences Vol. 2(in press)
駒澤大学総合教育研究部紀要 第一号分冊1
ページ: 521-537
From Caste to Class : Transformation of Marital Choices among Highly Educated Women in South Indian Urban Areas', In National Museum of Ethnology Vol. 32
Komazawa University Journal of The Faculty of Arts and Sciences Vol. 1