研究概要 |
<研究実績の概要> <離職した女医へのインタビュー実施> まず,本研究を進めるにあたり,辞職した女性医師と連絡を取ることの難しさが大きな障害となった.個人情報保護法の観点から,いずれの病院(医局)からも辞職した医師の現在の連絡先を教えることを極端に拒まれた.今後は同窓会組織と協働するなどして,個人情報保護法に抵触しない範囲でこの点を克服し研究を進める予定である. (1)インタビュー:4名の,常勤(大学附属病院の勤務医)から離職した先生に対するインタビューを実施した. (2)プレアンケートを実施. <インタビューとプレアンケートの結果> 1.研修医(26歳):離職理由は,医師に向いていないという自認.妊娠時の体調不良を理由に,医局長・教授から辞めざるを得ないような扱いを受けた.復職は希望していない. 2.専門医資格を取る直前(31歳):離職理由は激務と,妊娠・出産に関する職場の理解のなさおよびロールモデルの不在など.常勤への復職は,子供が小学校高学年になるのを待ち希望. 3.専門医(33歳):離職理由は,多忙による思考停止や焦燥感とモチベーションの低下.世間(男性)の女性に対して求める像と医師に求める像との矛盾.復職は,時問的拘束が少ない施設か開業の形で希望. 4.助手(39歳):離職の理由は,医局における肉体的・精神的な限界.医局や上司の方向性が不明であること.復職は,医局制度が変わり労働条件が改善されなければ望まない. <インタビューの成果> 離職には個々により独自の理由があるが,一定の類似性も見いだせた.(1)医学部入学当初よリモチベーションが低い(医学部のディズニーランド化),(2)社会通念の優勢(女は結婚,出産,育児をして当たり前),(3)完壁主義の破綻(燃え尽き症候群),(4)激務(過酷な勤務体制と多様性のなさ),(5)体制への不満(教授,医局体制),など. <インタビューの成果より,今後のアンケートに反映すべき点> (1)のパターン:どうして医師を目指したかを問うこと.(2)のパターン:社会通念とキャリアとの関係.(3)のパターン:精神面の調査.(4)のパターン:勤務体制の現状.(5)のパターン:医局制度の現状.
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