研究概要 |
<内容>本研究では,2つの私立医科大学において,創立以来卒業したすべての女性医師に郵送法によるアンケート調査を行い,卒後の就労状況特に離職の有無について調査した.その結果,現在54.9%の卒業生が離職していた.離職時期は医師になり10年以内が85%を占め,生涯のうちに一度でも離職する割合は73%に上ること,離職の原因は,(1)妊娠・出産との両立が困難,(2)子育てとの両立が困難,(3)勤務環境の悪さがトップ3を占めることなどの結果を得た.一方,常勤の女性医師で,助手以上の役職に就いている女性医師の割合は12.4%,教授は1人もいなかった.この結果は新聞,雑誌,その他のマスメディアから多数取り上げられた.研究の最終年である今年度は,自ら学生への授業,学会での講演のほか,雑誌投稿,国内外の研究会や学会において広く発表し,医学界および社会的関心をさらに喚起することに努めた.具体的には,雑誌発表1編と,国際学会における発表3編という成果として残した. <意義>本成果の意義は,女性の離職というテーマを通じ女性だけではなく,これまで漠然と感じられていた医学界の問題点(医師の不足,労働環境,偏在など)についても明確化し問題解決にあたることに寄与できたと考える. <重要性> これまで女性医師における離職の割合という基礎的なデータがないままに,医学界を取り巻く複雑かつ多様な問題点が社会的に深刻化しつつあった.国内外でこのデータを発表することにより直接的,間接的ながら,厚生労働省,文部科学省,内閣府男女共同参画局,各医学会などあらゆる分野における関心の高まりに寄与し,実際にそれぞれの団体において,女性医師の人生の様々な時期に合った多様な労働形態の提供を試みられるようになった.さらには,女性医師や医学生に自身のキャリア形成を熟考する機会を提供できたことは有意義であった.
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