この研究は、現代中国の女性がどのように生殖コントロールに対応し、彼女たちにとって計画生育成策(いわゆる「一人っ子政策」)がどのような意味をもっているかを、歴史的に明らかにしょうとするものである。 現在も中国の基本国策として堅持・推進されている計画生育成策(いわゆる「一人っ子政策」)については、人口問題からみたその必要性を主張する中国政府などの立場や、人工妊娠中絶を容認できないとする宗教勢力からの反対、また個人や家族の生殖に対する決定権を認めないことに対する批判など、賛否の両論が喧しいが、当の中国女性自身の立場からの意見はあまり聞こえてこない。本研究は、中国の女性にとっての計画生育政策を含む生殖コントロールの意味を解明するために、人民共和国下での母子衛生政策およびそれと深く関連した国家による生殖コントロールの進展過程を歴史的に跡づけ、同時にそれに対して生殖の主体である女性たちがどのように対応していたかを明らかにせんとするものである。 このため、今年度は、研究協力者および海外共同研究者との打ち合わせの上、北京・上海での関連資料調査・収集を行うとともに、大連地区でのフィールド調査のための予備調査を行った。
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