この研究は、現代中国の女性がどのように生殖コントロールに対応し、彼女たちにとって計画生育政策(いわゆる「一人っ子政策」)がどのような意味をもっているかを、歴史的に明らかにしようとするものである。 現在も中国の基本国策として堅持・推進されている計画生育成策(いわゆる「一人っ子政策」)については、賛否の議論が喧しいが、当の中国女性自身の立場からの意見はあまり聞こえてこない。本研究は、中国の女性にとっての計画生育政策を含む生殖コントロールの意味を解明するために、人民共和国下における母子衛生と計画生育の進展過程を具体的な地域に即して歴史的に跡づけ、同時にそれに対して生殖の主体である女性たちがどのように対応していたかを、大連近郊農村をフィールドとして、文献と聞き取りの両面から明らかにするものである。 このため、昨年度につづいて今年度も大連近郊農村でフィールド調査を行い、当該地域の女性たちが、どのように子供を産み、生殖コントロールをしていたかについて聞き取りを行った。 その結果、当該地域では「一人っ子政策」開始以前の1970年代に急速に生殖コントロールが普及したこと、1980年代には、政策と地域社会との矛盾が大きかったが、近年では大きな衝突はなく、むしろ計画生育政策が地域の女性のリプロダクティブ・ヘルスを実現する条件を提供している側面があること、等がわかった。
|