本研究では哲学史を、その「受容」、とりわけ言語(文化)圏の異なる哲学の受容に焦点を当てて、その傾向を明らかにし、概念関係の変遷から哲学史を解釈し直してみることを目指している。問題としては、 (1)ある主要概念、とくに、ideeは、どのような訳語として訳され、理解されたか。 (2)哲学史の部分訳や抄訳がどのように行なわれ、どのような理由なのか。 (3)翻訳のバリアントには、どういうものがあるか。 を、明らかにすることで、哲学受容の一側面を解明する。研究対象となるのは、19世紀の国家によって制度化され、教育体制に組み込まれていくフランスへのドイツ哲学の受容とその翻訳、また、その逆のフランス哲学のドイツ語翻訳、英語翻訳である。これを通じて、普遍的概念ではなく、翻訳に伴う誤解と受容の状況を明らかにすることで、新しい実証的哲学史を提示することを目標としている。 加えて、最終年度に当たる今年度は、19世紀フランス哲学の制度化に大きな影響を与えたクーザンによるプロシアの「教育視察報告」の翻訳、標準哲学史の様々な翻訳、そしてフィヒテのフランス語翻訳と受容に関する資料を分析した。成果は冊子体としても、3つの論文として印刷、配布。
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