平成19年までの研究によって景観形成のための行動原理として、「地域社会の活性度(ウェルネス)」の概念、とくに、自然環境と社会環境の調和を実現する地域社会の活力としての「包括的ウェルネス」の概念を得た。そこで、平成20年度は、平成19年度の研究体制を継続し、この「包括的ウェルネス」の概念をベースにして、「景観の価値」「景観形成行為の評価」「景観形成にかかわる社会的合意形成」などの課題を体系化する方向で研究を進めた。 具体的には、現地調査を継続し、インタビュー、資料収集を行いつつ、「景観倫理学」の構築に向けて基本的な概念として「包括的ウェルネス」の概念を中心に関係諸概念を整理した。 その成果として、見た目の景観ではなく、景観をその根底から支える地域社会へのあり方へと考察を重点化し、自然再生とのつながりでの「包括的再生」および「自然豊かで元気の出る地域づくり」という思想へと展開することができた。なお、この理念は、科学技術振興機構「地域に根ざす脱温暖化・環境共生社会」の「ローカルコモンズ(地域共同管理空間)の包括的再生の技術とその理論化」研究プロジェクトへと組み込まれた。 なお、本研究の成果は、平成21年度内に出版予定の著作(タイトル未定、出版社は、東京大学出版会)において公表の予定である。
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