研究課題/領域番号 |
18520010
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
出口 康夫 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20314073)
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研究分担者 |
喜多 千草 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (10362419)
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キーワード | シミュレーション / 科学方法論 / 計算システム / 科学的説明 / カオス研究 / デジタル・アーカイブ / 数値計算 / 科学的予測 |
研究概要 |
出口はシミュレーションの確立と発展において重要な役割を果たした科学上の業績、具体的にはフォン・ノイマンの衝撃実験(1944年)、E.ローレンツのカオス研究(1962年)などについてケース・スタディを行い、その研究成果を、京都大学大学院文学研究科に属する若手研究者たちと分担してまとめ、オーストラリア・シドニーで開催された国際ワークショップで発表した。この研究で得られた主な知見は以下である。(一)従来の定説とは異なり、フォン・ノイマンによる「史上初」のシミュレーションは電子計算機による計算ではなく、より古い計算システムである、エッカートのパンチカード式計算機による数値計算を念頭において設計されていたこと。(二)その意味で、シミュレーションという手法は、1920年代におけるパンチカード式計算機を用いた(運動方程式から惑星の軌道を求める)天文計算にまで遡ることができること。(三)ローレンツは大気循環を記述する微分方程式を最大限簡略化したことでカオス現象を発見したが、その簡略化は計算の簡素化を目指して行われたのではなく、「現象をより単純にモデル化することで、モデルの予測の精度は下がるが、説明力は逆に増す」という「科学的説明」に関する彼独自の考えに則ったものであったこと。これらの知見はいずれも、従来のシミュレーション観の見直し迫るものであり、海外の研究集会でも大きな注目を集めた。また喜多は、国内のシミュレーション研究者へのインタビュー資料を整理するとともに、シミュレーションに関する一次資料・二次資料のデジタル・アーカイブ化を推進しホームページに随時掲載するとともに、共同研究者が随時資料を閲覧・増補できるシステムを構築した。
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